競売とは
競売とは、裁判所の説明によると以下の通りです。
債権を有している人(債権者)の申立てにより,裁判所が,債務を弁済することができなくなった人(債務者)の所有する不動産を差し押さえて,これを売却し,その代金を債務の弁済にあてる手続
そして債務の弁済にあてる手続きとしての競売には主に2通りございます。
- 抵当権実行による競売
- 強制執行による競売
です。詳しくご説明していきます。
1. 抵当権実行による競売
住宅ローンの借入をしている場合はこの抵当権実行による競売での申し立てとなります。そもそも抵当権とは民法に以下のように規定されています。
抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
民法369条
そして登記の前後で優先順位が決まります。住宅ローンは不動産を購入するタイミングで1番の抵当権を設定します。つまり競売になったとしてもどの債権者よりも先立って競売で売却された代金から弁済を受けることができるのです。例え自己破産をされようがその不動産から弁済を受けることが可能となります。
抵当権実行による競売を申し立てるためには以下の3つが必要です。
- 抵当権が存在することの証明
- 被担保債権(要するに住宅ローン)の存在
- 被担保債権の履行遅滞・不履行
です。難しい言葉ですが要するに、抵当権が設定されている土地建物全部事項証明書を提出すればよく、被担保債権や履行遅滞等については競売申立書に記載していくこととなります。
2. 強制執行による競売
住宅ローンなどの場合は抵当権設定を前提として融資を行っていますが、例えば消費者金融などの場合融資時点では抵当権設定を条件としていません。しかし債務者が履行遅滞に陥り、その弁済を受けたい場合に取りうる手段として強制執行による競売がございます。
ただし抵当権設定とは異なり競売に先立って債務名義が必要となります。債務名義とは民事執行法で以下のように規定されています。
(債務名義) 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
民事執行法第22条
一 確定判決
二 仮執行の宣言を付した判決
三 抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。)
三の二 仮執行の宣言を付した損害賠償命令
三の三 仮執行の宣言を付した届出債権支払命令
四 仮執行の宣言を付した支払督促
四の二 訴訟費用、和解の費用若しくは非訟事件(他の法令の規定により非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)の規定を準用することとされる事件を含む。)、家事事件若しくは国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(平成二十五年法律第四十八号)第二十九条に規定する子の返還に関する事件の手続の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分又は第四十二条第四項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定める裁判所書記官の処分(後者の処分にあつては、確定したものに限る。)
五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
六 確定した執行判決のある外国裁判所の判決(家事事件における裁判を含む。第二十四条において同じ。)
六の二 確定した執行決定のある仲裁判断
七 確定判決と同一の効力を有するもの(第三号に掲げる裁判を除く。)
要するに司法機関によって法的に認められた債権の証明をもってして、初めて強制執行が可能となるということです。つまり以上の書類が存在していない場合、債権者は競売の前に訴訟を起こす必要がございます。
なお債務名義を取得した債権者が競売を申し立てをしたとしても、第1抵当権者がいて債権の回収が図れないとなると、裁判所の判断で競売をストップすることもあります。(「無余剰による取消」と言います。)
競売の流れ
競売は債務の弁済が目的である以上高く売れなければ意味がありません。そこで裁判所が不動産を調査・評価し、広く公告して、入札形式を採用することで、より公平でより高い売却を実現することとしています。以下競売の流れです。
- 競売開始決定通知
- 執行官・不動産鑑定士による調査
- 売却基準価額と入札日の決定
- 公告
- 入札
- 開札
- 売却許可決定
- 配当
詳しく見ていきましょう。
1. 競売開始決定通知
裁判所は、申立てが適法にされていると認められたときは不動産執行を始める旨及び目的不動産を差し押さえる旨を宣言する開始決定を行います。その旨を債務者に通知します。競売開始決定通知には申立をされた裁判所や事件番号、競売が開始決定がなされた旨や物件目録・債権目録などが記載さています。
2. 執行官・不動産鑑定士による調査
通常の不動産売却と異なり、競売物件を購入検討している人は不動産を内見したりすることはできません。そこで競売の入札を行う際に入札検討者は資料が開示されます。いわゆる3点セットと呼ばれているもので以下の通りです。
- 現況調査報告書(裁判所執行官)
- 評価書(不動産鑑定士)
- 物件明細書(裁判官書記官)
物件明細書は不動産の権利関係を明らかにするもので、現況調査報告書や評価書が作成され裁判所に提出されてから裁判官書記官が作成します。この調査は執行官・不動産鑑定士がこれらの書類を作成するために実施されるものとなります。
3. 売却基準価額と入札日の決定
売却基準価額
不動産鑑定士が評価書を作成すると裁判所に提出されます。そこで裁判所書記官が物件明細書を作成することはご説明した通りです。この後に売却基準価額を決定します。売却基準価額とは,評価人の評価に基づき,執行裁判所が不動産の売却の基準となる価額を定めたものです。なお売却基準価額の決定要因として確定した売却条件が評価書に反映されていなかった場合、裁判所は評価書の補正を命ずることもございます。そうなると売却基準価額の決定に時間を要することもあります。
そして入札をするにあたってはここに掛け目(10分の7もしくは8)を入れて買受可能価額とします。買受可能価額とは,買受申出(入札)価額がこの価額以上(この価額を含む。)でなければ適法な入札とならないという価額です。
入札日
入札日が確定します。通知が届くおよそ1月~2月前後に日付となることが一般的です。
4. 公告
入札について公告をします。裁判所により異なりますが、東京の民事執行センターでは通常入札日の15日前から3点セットも閲覧が可能となります。現在ではインターネット上での不動産競売物件情報サイト(BIT)にて閲覧する入札検討者がほとんどです。
5. 入札
入札期間は裁判所によって異なりますが、東京の民事執行センターでは8日間とされています。入札は以下のように行われます。
- 入札保証金
- 入札書(金額を明示)
- その他必要書類
入札保証金は売却基準価額の10分の2です。それなりの金額を用意し事前に振込手続きを行わなければなりません。よって冷やかしなどの入札はできないこととなっています。万が一落札してしまい残代金の支払期限までの支払がなされなければ、入札保証金は没収されることとなります。
6. 開札
そして開札となります。なお法律上競売の取り下げは開札日の前日までです。そして開札結果は当日中もしくは翌日には不動産競売物件情報サイト(BIT)に掲載されることとなります。掲載内容は以下の通りです。
- 入札数
- 最高価買受申出額
- 最高価買受申出額の申出人の属性 個人 or 法人
7. 売却許可決定
最高価買受申出人が決まると、売却決定期日に不動産を最高価買受申出人に売却するか否かを執行裁判所が決定します。1週間以内に債権者、債務者及び所有者等の利害関係人による売却許可決定に対する不服申立がなされない場合に売却許可決定が確定することになります。確定からおよそ1か月後程度をめどに裁判所から納付期限が定められ、残代金を納付したら落札者に所有権が移転することとなります。
8. 配当
各債権者からすでに債権届出書、配当要求書等が提出されていますので、その書類をもとに裁判所にて予め配当表の原案が作成されます。各債権者は配当期日に裁判所に出頭しその配当表を確認し、異論がなければそのまま配当がなされることとなります。よって住宅ローンもこの配当期日にまとまった金額を返済したこととなります。
【競売後】落札者による建物明渡しの手続き
代金納付から強制執行までの流れ
売却許可決定が下り、落札者が代金を納付すると所有権が落札者に移転します。そして当然ながら速やかにあなたに立ち退きを求める手続きに入ることとなります。
強制執行断行日はどうなる?
当日は以下の流れになります。
執行官と補助業務執行者(数名)が訪問 ※落札者も同行するケースあり
↓
補助業務執行業者が自宅の荷物をダンボールに梱包しトラックに搬出
↓
鍵を交換して終了。なお搬出したダンボールは保管場所へ移す
↓
荷物は1か月程度保管し、期限内に受け取りに来なければ「売却」もしくは「廃棄」