管理費等を滞納するとどうなる?
管理費や修繕積立金はマンションの維持管理のために必要となる費用です。区分所有者が管理規約もしくは敷地権割合に応じたこれらの費用を支払ってくれなければ日常の管理はままなりません。よって管理組合はその債権を請求すべく、初めは管理組合自らが、長期滞納になると弁護士を通じて督促がなされることになります。そしてそれでもなお支払がなされなければ競売手続きに移行していくこととなります。なお管理規約に明記されていれば、この弁護士費用や競売費用等も区分所有者に請求することが可能となります。
管理組合による競売は3種類
管理組合が申立てをする競売には次の3種類がございます。
- 強制競売
- 区分所有法第7条による競売
- 区分所有法第59条による競売
1. 強制競売
管理費等の請求を訴訟等の形で実施し、その債務名義(勝訴判決や和解調書等)をもって競売手続きを行うものです。債務名義を取得すれば当該マンションを競売で強制的に換価することができる他、給与や預貯金など他の財産の差押も可能となります。
ただし強制競売によってマンションの競売を申し立てる場合は無余剰の取り消しの可能性は排除できません。要するに先順位である住宅ローンや滞納している税金などに優先的に配当がなされる結果として、マンションの管理費等を徴収できるほどの余剰が発生しないと裁判所が判断した場合に、競売自体が取り消されてしまうということです。
2. 区分所有法第7条による競売
区分所有法第7条では、管理組合には先取特権が認められていることを明記しています。
区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
区分所有法第7条第1項
この先取特権は債務名義がなくても競売の申立ができるというメリットがあります。
ただし実務においてはほとんど利用されることはありません。無余剰取消のケースが多く競売申立費用(60万円~)が無駄になる可能性もございますし、債務名義も取得していませn。債権回収を図る上でほとんどの弁護士の先生方はおススメをしないのではないでしょうか。
3. 区分所有法第59条による競売
この競売は主に滞納者の排除を目的とした競売手続きです。実際の条文を見てみましょう。
第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
区分所有法第59条1項
この競売の特徴は、相応の事情がなければ認められることはなく、また無余剰取消の適用がありません。
59条競売の実体的要件
対象者の区分所有権を強制的にはく奪する行為を認めることとなるので要件は厳格に定められております。
- 共同生活に著しい障害が生じている
- 他の方法によっては他の区分所有者の共同生活の維持を図ることは困難
59条競売の手続要件
手続要件は以下の通りです。
- 管理組合総会の特別決議(議決権の4分の3以上)
- 弁明の機会付与
- 裁判上の行使
なお、この裁判上の行使とは「競売請求訴訟」という訴訟に勝訴し確定判決を得ることであり、いきなり競売申立をすることができないということです。
競売後の滞納した管理費等の支払義務は?
落札者(特定承継人)に支払義務
では万が一競売になった場合、管理組合はどのように管理費等を回収するのでしょうか。管理費等は競売の配当によって回収することはできません。落札者から前所有者の滞納管理費を徴収することとなります。
他人の権利義務を個別的に取得する者を特定承継人といい、競売の場合の落札者も特定承継人に該当します。そして区分所有法では管理組合が滞納した管理費等を落札者に請求する権利を認めているのです。以下条文です。
第7条第一項(先取特権)に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。
区分所有法第8条
と規定されています。
落札者に求償権(旧区分所有者に立て替え分を請求する権利)はある?
求償権を認めた判例もあり
管理費等が滞納したマンションが競売にかけられる場合、不動産鑑定士が評価した金額から滞納している管理費等の金額に応じて掛け目を入れて、売却基準価額を決定します。よって滞納分を安くしているので落札者の損害額としてはプラスマイナスでゼロだという判断もあります。ただし実際には求償権を認めた判例もありますので注意が必要です。
マンションを競売で買い受けた者が支払った滞納管理費を元の所有者に求償することが認められた事例(東京高裁 平成17・3・30)」
要するに競売になっても落札者から滞納している管理費・修繕積立金・遅延損害金・弁護士費用を請求される可能性はあるということを前提として解決方法を選択する必要があるということです。
解決方法
- 管理組合に分割での支払いのご相談
- 任意売却