Q、親族間売買の注意点は?

A、以下の4つが主な注意点です。

  1. みなし贈与と認定されないための売買代金の設定
  2. 譲渡所得税
  3. (住宅ローン利用の場合)金銭消費貸借契約の契約違反
  4. 詐害行為

Q、親族間売買での適正価格とは

A、みなし贈与については相続税法第7~9条に規定があります。「著しく低い価額の対価で財産の譲渡があった場合には、当該財産の時価との差額の贈与により取得したものとみなす。(一部割愛)」とあります。しかし「著しく低い価額」については相続税法や通達などで明確な判定基準は定められてはいません。よって「相続税の補完税」という贈与税の性格、相続税法の財産評価基本通達、そして売主買主の事情を鑑みて、取引ごとに類推していく必要があります。

Q、不動産査定の依頼先は?

A、一般的には不動産鑑定士が不動産の鑑定を行います。サービス、事務所によって費用はまちまちですが、国土交通省が公共事業に要する鑑定の「基本鑑定報酬額表」((公)日本不動産鑑定士協会連合会宛て中央用地対策連絡協議会事務局発行)によると15万円~30万円前後です。

なお当社では仲介及びローンあっ旋を希望している方の場合(契約書のみをご希望の方には当社グループ行政書士PLY法務事務所の契約書・査定書書類作成サービスをご利用の場合)、査定書は付随しております。

Q、親族間売買の費用は?

A、主なものは以下の7つです。

  1. 所有権移転にかかる登録免許税および司法書士報酬
  2. 不動産取得税(所有権移転から半年後以降に納税通知が届きます)
  3. 不動産売買契約書の印紙代
  4. (不動産会社を介する場合)仲介手数料
  5. (住宅ローンありの場合)金融機関の事務手数料・不動産調査料
  6. (住宅ローンありの場合)抵当権設定にかかる登録免許税・司法書士報酬
  7. (住宅ローンありの場合)金銭消費貸借契約書の印紙代

あとは売買代金を用意するのみです。

Q、費用がもったいない。親族間売買の所有権移転登記は必要?

A、意外と思われるかもしれませんが登記自体は法律で義務化されているわけではありません。しかし民法177条に規定されている通り、登記をしなければ第三者に権利を主張することはできません。よって売買や賃貸、もしくは不動産担保ローンの借入などを行うことができなくなるということです。また旧所有者が税金などを滞納すると差押の対象にもなりますし、相続が発生したら当然ながらその他相続人に権利を主張されてしまいます。登記費用は発生しますが権利をしっかりと主張するためにも登記は必要です。

Q、金銭の授受を行うことなく所有権移転登記を行うことはできますか?

A、真正なる売買を行っていないにも関わらず所有権移転登記を行うとすれば、当然ながら法務局に虚偽の書類を提出するということとなります。また金銭の授受がなされていないにも関わらず所有権移転がなされたとみなされ、贈与税の対象にもなります。さらには売買、賃貸および借入などで第三者を巻き込めば事態は深刻です。罪に問われたり、損害賠償に発展したりとデメリットしかありません。

Q、親族間売買では不動産会社を介さなくても大丈夫ですか?

A、時価評価で売買代金の金銭授受がしっかりと行われていれば親族間売買での取引も何ら問題ありません。

Q、親族間売買の不動産売買契約書の記載事項は?

A、宅地建物取引業者が媒介もしくは自ら取引を行う場合、宅建業法上いくつか規定の項目が記載された書面を売主買主双方に交付しなければいけませんが、個人間ではそのような規定はありません。民法の契約自由の原則により、双方が納得していれば書式等は特に問いません。

Q、親族間売買で住宅ローンを組みたいと思っています。インターネットなどで審査の申込をしても問題ありませんか?

A、審査をすると個人信用情報に「申込」の履歴が残ります。そのまま審査が通れば問題ありませんが、否決されると他の金融機関に申込をする際の心証は悪くなります。融資担当をしていた頃、「申込」の履歴が複数あるお客様の審査には警戒感を持って臨んでいました。

Q、住宅ローン控除は利用できますか?

A、条件が整えば利用は可能です。ただし住宅ローン控除適用は売買代金の時価判定を行う税務署管轄ですので注意が必要です。

Q、住宅ローンを組んだ後はその不動産に住む予定はありません。それでも住宅ローンは組めますか?

A、融資を受ける際に締結する金銭消費貸借契約の約款には「自己の居住に供する不動産の取得等のために本契約を締結する」とあります。つまりその不動産に住まないということはそもそも住宅ローンを組む条件を満たしていないということです。もし虚偽の申告で住宅ローンを借り受けた場合、当然ながら契約違反となり解約事由に該当します、そして残代金の一括請求がなされます。また一括請求されてからも金融機関から厳しい対応を迫られることが予測されます。

Q、親族間売買で住宅ローン以外の資金調達方法とは?

A、地方銀行、信用金庫、信用組合やノンバンクなどもひとつの資金調達方法になるでしょう。どの金融機関もそうですが、必ず「資金使途・申込金額・返済期間」を確認します。そしてこれらの事情に応じて検討をしていくことになりますが、相手方の心象を良くするためにも返済計画をしっかりと考えておかなければなりません。当社では媒介のご依頼いただいた場合、資金調達のサポートも行っております。

Q、父が相続した実家を親族間売買で購入しようと考えています。注意すべき点はありますか?

A、譲渡所得税について注意が必要です。譲渡所得税は簡潔に言うと「売った値段-買った値段(減価償却後)」の利益に対する課税で最大約40%にも上ります。そもそも居住用不動産を売却する際には税法上の特例として「3000万円の特別控除」があります。つまり利益3000万円までは無税ということです。ただし親族に売却した場合にはこの特例は適用されません。(国税庁HPご参照下さい)また相続した不動産の多くは買った金額自体が非常に安くなる(もしくは買った金額がわかる資料がなければ売った値段の5%を買った金額とする)ため、譲渡所得税が課される可能性が非常に高いでしょう。

Q、事業経営に行き詰りました。自宅を親族間売買で息子に譲渡したいと思っております。問題はありませんか?

A、会社経営者の場合、ほとんどのケースでは「管財事件」として破産管財人が手続きを進行していきますが、破産管財人は形式的に破産者の名義(この場合は息子さん名義)ではない財産も破産財団(債権者に弁済・分配すべき財産のこと)に組み入れることができます。また破産財団の隠匿や不当に価値を減少させる行為は免責不許可事由となりますので、免責の許可が下りない可能性もあります。もし債務超過に陥っており、それでも住み続けたいということであれば、破産管財人、もしくはオーバーローンで自宅に関しては抵当権者に承諾の決定権があるようであれば抵当権者に許可を得て親族間売買を行うという方法もございます。