不動産の価格に影響を及ぼす要因

不動産の価格は他のモノやサービスと同様、需要(買主)と供給(売主)が一致すると取引が成立します。しかし不動産の需要と供給のバランスは様々な事象を要因として変化をします。

国土交通省が定めた「不動産鑑定評価基準※」によると以下の3つの要因があると述べられています。

  1. 一般的要因
  2. 地域的要因
  3. 個別的要因

それぞれ詳しく見ていきましょう。

一般的要因とは

「一般的要因とは、一般経済社会における不動産のあり方及びその価格の水準に影響を与える要因のこと。以下の4つの要因に大別されます。

  • 自然的要因
  • 社会的要因
  • 経済的要因
  • 行政的要因

自然的要因

地質・土壌の状態、地勢、地理的位置関係や気象状態など

社会的要因

人口動態、家族構成・世帯分離など

経済的要因

景気、金融情勢や税負担の状態など

行政的要因

土地利用に関する計画、不動産に関する各種規制、不動産に関する税制など

こういった要因が不動産の売却や購入の意思決定に多大な影響を及ぼすのです。

経済的要因である金融情勢を例に挙げてみましょう。

例えば住宅ローンの金利2%から1%になる情勢だとしましょう。当然ながら住宅ローンの月々の返済額が下がります。住宅ローンの借入可能額は返済比率(年収に対する住宅ローン返済に占める割合のこと。上限35%が一般的。)によって算出されるため、同じ年収でも金利が下がり住宅ローン返済額が減ると借入可能額が上がることになります。(例えば同じ年収400万円でも35年フルローンで組むとなると、2%の場合は3500万円ほどだったのが、1%だと4100万円ほどに上がります。※フラット35HP「年収から借入可能額を計算」より)

予算オーバーかどうかはさて置き、借入可能額は600万円ほど上がるため価格も上昇傾向になるということです。

地域要因とは

「地域的要因とは、一般的要因の相関結合によって規模、構成の内容、機能等にわたる各地域の特性を形成し、その地域に属する不動産の価格の形成に全般的な影響を与える要因をいう。」とあります。

個別の不動産価格のベースとなる地域そのものに帰属する要因のことです。

街路の幅員・構造の状態、都心との距離・交通施設の状態、商業施設の配置、インフラ(上下水道・ガス・情報通信基盤)の整備状況、嫌悪施設の有無や自然災害・公害などが挙げられます。

例えば電車での都心へのアクセスの利便性が上がったり(都心地下鉄と直通運転になったなど)、もしくは大型商業施設が出来たりすると価格は上がります。その逆に地域でたくさんの人が働いていた、もしくは取引をしていた大手企業の工場が閉鎖されたりすると不動産価格は下落してしまいます。

個別的要因

「個別的要因とは、不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因を

いう。」とあり、より個別の不動産にフォーカスを当てたものです。この個別的要因こそが不動産取引において具体的に比較検討される項目になるでしょう。

土地であれば間口・奥行・形状・地積、接道状況、交通施設との距離、インフラの整備状況などです。建物の場合であれば構造物そのもの(構造・材質・面積など)の他に遵法性(建築基準法や消防法に適合した建物か)などがあります。

また上記の他に賃借権などのその不動産に付随する権利関係も個別的要因に属します。

不動産の公的な4つの価格と実勢価格

「不動産には5つの価格がある」という言葉は聞いたことがありませんか。

それは次の5つのことを指して言います。

  1. 公示価格
  2. 基準地標準価額
  3. 路線価
  4. 固定資産税評価額
  5. 実勢価格

です。1~4は行政庁が示した不動産価格で、5は実際の取引価格のことです。

詳しく見ていきましょう。

路線価

管轄:国土交通省

時期:1月1日時点評価を毎年3月下旬に発表

公示価格は地価公示法において「適正な地価の形成に寄与すること。」を目的として公示されています。一般的な土地取引の指標としてはもちろんのこと、公共事業地の取得価格算定の基準にもなったりします。不動産鑑定士2名以上で鑑定されています。

基準地標準価格

管轄:都道府県

時期:7月1日時点評価を毎年9月下旬に発表

基準地標準価格は国土利用計画法に基づいていますが、「適正な地価の形成」を図るという点は公示価格と同様です。評価方法も公示価格と大きく変わりませんが、対象エリア(都市計画区域外も対象)が広かったり、評価時点を公示価格の半年後にしたりなど、公示価格の補完的指標ともされています。不動産鑑定士1名でも良いという点も公示価格と異なります。

路線価

管轄:国税庁

時期:1月1日時点評価を毎年7月上旬に発表

路線価は国税庁が発表するもので、相続税および贈与税の財産評価をする場合に適用する「道路に面した1平方メートルあたりの評価額」のことを言います。国税庁のHPにも記載の通り公示価格の80%程度とされています。

固定資産税評価額

管轄:市区町村

時期:3年に1度評価替え

固定資産税評価額は1月1日時点の所有者に課税される固定資産税・都市計画税の計算根拠となるものです。総務省の告示により公示価格の70%程度とされています。4月1日以降当該年度の固定資産税評価額を知ることができます。なお固定資産税評価額は毎年ではなく3年に一度の評価替えとしていますが、これは課税事務の簡素化を図り徴税コストを抑えるためです。

実勢価格

いわゆる市場で取引されている取引価格のことです。

4つの価格は過去の取引データに基づいて算出していますが、実勢価格はその時勢に応じて変動します。つまり取引事例を参考にしてもそれより高くもなり低くもなるということです。

不動産査定の査定方法

国土交通省「不動産鑑定基準」には以下の3つの方法が記載されています。

  1. 原価法
  2. 取引事例比較法
  3. 収益還元法

そして評価方法の使い分けは以下の通りです。

戸建(建物部分)原価法
戸建(土地部分)取引事例比較法
マンション取引事例比較法
投資用不動産収益還元法

詳しく見ていきましょう。

原価法

価格時点における再調達原価を求め、その再調達原価に耐用年数を考慮して減価修正を行いその価格を算出します。

例)建物部分の再調達原価1,500万円 耐用年数25年(25年経過時の残価0円)経過年数10年とすると・・・⇒ 1500万円×(25年-経過年数10年/25年)=900万円

取引事例比較法

取引事例比較法は、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の試算価格を求める手法とあります。

土地・マンションについては取引事例比較法が採用されます。実際に購入する側は競合物件と比較しながら物件を選定します。ただし土地についてはどうしてもその土地が欲しいという事情で取引がなされることも起こり得ますので、マンションの方が取引事例比較法に馴染み深いと言えるでしょう。

収益還元法

収益還元法は投資用不動産などに用いられる指標です。なぜ収益に注目するかというと、投資用不動産の購入資金を融資する金融機関が、収益を基に融資額を決定するからです。たとえ将来高く売れたとしても保有期間中の返済原資(家賃)がなければ、借りたお金を返すことができないからです。

実際は家賃相場は適正か、収益ではなく実需で使用される場合の取引事例比較法や原価法による査定額と乖離していないかなどもチェックされます。

不動産の査定の正確性は?

結論から言うと正解はありません。

不動産査定をする人によって不動産そのものの価値が変わるワケではありません。

変わるのは売り出し価格で購入検討者が受け取る印象だけです。

購入検討者の立場で考えてみて下さい。相場より500万円ほど高く売り出しをしている物件があったとして、300万円の値下げ交渉をしたり、半年以上価格が下りてくるのを待って購入するでしょうか。半年以上待ったとしても売れ残っていると購入検討者は不安を感じ、さらに買い控えます。

購入検討者は決して査定書の内容を見て決めるわけではありません。

売り出し価格を高くすれば高く売れるということではないのです。

比較検討している物件の中で、総合的にどう感じるかが全てです。

目的は高く売ることです。

その値決めから購入検討者とどのような流れで内見のセッティングをし、伝えるべき内容をどのタイミングでどのような言葉で伝えるかを考え、購入申込を早期に提出したくなるような対応をしていくことこそが重要です。

自分で不動産査定してみよう

戸建(土地建物)の場合

土地と建物で分けて考えます。まずは土地です。

公示価格は実際の成約価格を基にして不動産鑑定士が鑑定を行っています。

そしてこの公示価格を基準にして市町村が各不動産の固定資産税評価額を決定しているということをお伝えしました。つまり固定資産税評価額からご自身の不動産を公示価格水準で査定することも出来るということです。

計算式は次の通りです。

「土地の固定資産税評価額÷70%」

不動産鑑定士が算出するであろう「ご所有の不動産の価格」がおおよそ見えることとなります。もちろん実勢価格とは異なりますが参考にするには充分です。

続いて建物の評価です。

建物の固定資産税評価額は新築時に市区町村の資産税担当が訪問し、構造・建材・設備などを点検して「再建築価格」を決定。法定耐用年数の残存期間に応じて建物の経年劣化による減価分を「経年減点補正率」を乗じて算出します。ただし

・そもそも再建築価格が実勢より割安に設定されていること

・経年減点補正率を乗じる計算に基づくと、例えば木造築10年経過で半値近くになってしまうこと

を加味すると建物の固定資産税評価額より上乗せした金額を建物価格として見ても良いでしょう。

マンションの場合

マンションの場合は戸建と異なり、原価法ではなく取引事例比較法で計算します。

よって同マンションもしくは近隣の同規模マンションの売り出し物件を参考にしてみて下さい。ただしリフォームされている物件についてはその費用も勘案して下さい。