揉める原因となる5つのお金の問題
離婚に伴って揉めるお金の原因は主に5つあります。協議で解決していくか裁判で決着させるのかは別として相手方と一度話し合いが必要となります。
- 慰謝料
- 婚姻費用
- 年金分割
- 財産分与
- 養育費
1. 慰謝料
不法行為で受けた精神苦痛に対する賠償金
請求期限:離婚成立後3年以内(生命・身体に対する不法行為の場合は5年以内)
金額の目安としては50~300万円が一般的です。そして当然ながら不法行為が認められなければ請求できる債権ではないため、不法行為そのものを立証する必要があります。
2. 婚姻費用
別居中の生活費は相互に扶助義務を負う夫婦2人で分担
請求時点からしかもらえない
婚姻費用については民法上に規定があります。
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
民法760条(婚姻費用の分担)
婚姻費用とは要するに結婚生活を続ける上で発生する生活費諸々です。衣食住に関する費用・子どもの養育費用・医療費などがそれにあたります。たとえ離婚を前提とした別居であっても離婚が成立するまでは双方が婚姻費用を負担する義務を負うのです。そして多くの場合収入の多い方が少ない方に対して支払うこととなります。それぞれの状況によって異なりますので協議が必要ですが、裁判所で算定根拠を提示しておりますのでご参照下さい。
平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
3. 年金分割
専業主婦もしくは収入格差のある夫婦が対象で、婚姻期間中の相手方の厚生年金の一部を分割できる
期限:離婚成立から2年以内
年金分割には2種類あります。
- 3号分割
- 合意分割
日本の年金制度は2階建て構造になっており、仕組みも複雑なため簡潔に説明します。
3号分割
国民年金制度(1階部分)の被保険者は1~3号までで、「1号は自営業者」・「2号はサラリーマン等」・「3号は主に専業主婦である2号被保険者の配偶者」となっております。3号被保険者は2号被保険者の扶養に入っている状態で、2号被保険者の保険料納付をもって国民年金保険料の支払いを免除されています。しかし厚生年金制度(2階部分)では保険料の支払いをしていないため、当然ながら自身の将来の厚生年金の計算に全く反映されず、2号被保険者は国民年金+厚生年金、3号被保険者は国民年金のみの受給となります。そこで2号被保険者と婚姻関係にある期間については、3号被保険者はその半分を自身の厚生年金に上乗せすることができるよう請求することが可能となりました。このことを3号分割といいます。
合意分割
3号分割と理屈は同じです。夫婦共働きで収入格差がある場合、当然ながら収入の多い方が厚生年金の受給額も多くなります。しかし結婚生活は夫婦共同で支えていくものです。その期間中の厚生年金については夫婦の合意のもとで分割ができるという制度です。最大で2分の1です。それ以上の請求はできません。
4. 財産分与
夫婦の共有財産を清算
期限:離婚成立から2年以内
婚姻期間中に形成した財産は清算しなければなりません。原則は夫婦2分の1ずつです。なお結婚前の預貯金や相続で得たお金や不動産などは特有財産として財産分与の対象となりませんのでご注意下さい。
また債務については財産分与の対象となりません。第三者である債権者との関係があるからです。住宅ローンの場合であれば、金融機関に了承を得ることなく自分名義の住宅ローンを一方に分与させることができるでしょうか。当然ながらできませんよね。つまりマイナスの分を考慮した財産分与が必要となるのです。
5. 養育費
「親権者とならなかった親」も負う子に対する扶養義務
たとえ離れてくらしていたとしても、扶養義務として「教育費」や「衣食住に関する費用」など子を育てるにあたり必要な費用を養育費として支払う必要があります。それぞれの状況によって異なりますので協議が必要ですが、裁判所で算定根拠を提示しておりますのでご参照下さい。
平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
3つの支払方法
婚姻費用と養育費については原則月払いです。
慰謝料・財産分与については以下の3つのうちいずれかの支払方法で支払われます。分割払いについては避けたいところですが、事情によっては受けざるを得ない状況も十分に考えられます。その場合は「執行認諾文言付公正証書による離婚協議書」の作成を検討することも必要となります。
- 一括払い
- 分割払い
- 現物払い