Q、共有持分・共有名義とは?

A、共有している不動産の所有権の持分のことを「共有持分」または「共有名義」といいます。一般的な呼称でして法律上の言葉ではありません。法律上の「共有」の定義は民法(249条から264条)にその規定があります。

共有になるきっかけは様々ですが、一般的に相続により「親子」もしくは「兄弟姉妹」の共有になったり、夫婦が連帯で住宅購入をして共有になったりします。

Q、マンションの共有とどう違うの?

A、マンションも原則は共有ですが、民法の特別法として区分所有法が制定され昭和58年の大改正で法整備がなされ、単独所有に近い権利形態(処分が自由)になっております。

Q、共有持分は単独所有と比べてどのような制限がありますか?

A、不動産を所有していると変更・処分行為、管理行為、保存行為のいずれかに該当する行為をしています。単独所有の場合は当然ながら何も気にすることなく全ての行為をご自身の意思で行うことができますが、共有の場合はそうはいきません。ご自身が所有する持分割合に応じてできることとできないことが出てくるのです。民法251条および252条にその規定がございます。以下の通りです。

変更・処分管理保存
条文251条252条本文252条ただし書き
同意全員持分価格の過半数各共有者単独

共有者と意思の疎通が取れている間は何の問題もありませんが、変更・処分行為や管理行為は単独で行うことができないという点は考慮しておくべきでしょう。

Q、共有持分の主なトラブルとは?

A、主に次の4項目のいずれか又は複数で共有者とトラブルになっています。

  1. 共有者の一人が共有不動産を使用・占有している
  2. 費用負担
  3. 収益分配
  4. 不動産の管理方法

Q、共有持分を保有しおくことのリスクは?

A、

権利と義務は持分に応じて発生しますが、権利を思うように行使することができない場合は、義務(負担)だけが重くのしかかります。

上記のように共有不動産は行為制限がありますが、不動産所有者として連帯で責任を負わなければなりません。収益や行為については持分割合でしか権利主張はできませんが、仮に所有不動産の塀が壊れて通行人をけがさせてしまった場合の損害賠償は共有者のひとりにお金がなければその負担もしなければなりません(もちろんその共有者に対して持分に応じた費用を請求する権利は発生します)。例えば共有持分1/3で、損害賠償が300万円だった場合に、2人で150万円ずつ負担するということです。

Q、共有持分を放置しておくとどうなる?

A、共有持分はもともと近しい人と共有をスタートさせますが、代替わり(相続)が進んでいくと、もはや他人同然です。さらに放っておくと所有者すら不明になります。なお日本で所有者不明の土地の面積は九州の面積を超えているそうです。いずれにせよ所有者がはっきりしているうちに解決をしておかなければなりません。

Q、共有者のみで行う共有持分の解決方法は?

A、解決方法は次の5つです。

  1. 現物分割
  2. 売却による換価分割
  3. 共有持分分割請求による換価分割
  4. 価格賠償(共有者に買い取ってもらう・共有者の持分を買い取る)
  5. 共有持分放棄

なお共有持分放棄についてありえないと思われる方も多いと思いますが、近年は増加傾向にあります。

例えば地方の山の一部が、遠い親戚と共有という形で相続してしまったらどうでしょう。不動産所有者には所有者責任も生じます。また収益を生まないとなれば固定資産税や管理に要する費用をそのまま持分割合に応じて負担し続けなければなりません。それであればキレイさっぱり権利を放棄してしまおうということで、有効な解決策のひとつとなっています。

Q、共有持分の売却とは?

A、価格賠償の解決方法に近いですが、共有者に買い取ってもらうもしくは共有者の持分を買い取ることができない場合に行います。全くの第三者に共有持分を売却するということです。共有持分の売却は、共有の処分行為(行為制限)と異なり単独で行うことができます。

Q、共有持分を買い取った不動産会社はどのようなアプローチをしますか?

A、共有持分の解決方法は不動産会社とて同じです。よって共有者に共有物分割請求も視野に入れながら、共有者に持分を売却するか、相手方の共有持分を買い取るかのいずれかになります。

※共有持分分割請求とは裁判所の手続きを経て、強制的に換価する方法です。競売となるため当然ながら市場価格の7~8割目安での落札となります。共有はご説明の通り、実に不合理な状態にある所有形態です。社会全体の要請として単独所有の実現を図る共有物分割を、裁判所としても保護する傾向にあります。

Q、共有持分の最良な解決方法は?

A、やはり単独で共有持分を売るのではなく、

  1. 不動産全体を市場相場で売却すること
  2. 市場相場の値段で相手方にご自身の共有持分を買い取ってもらうこと

です。

Q、相談すべき不動産会社は?

A、上記の最良な解決方法を鑑みると、まずはその交渉をしてくれること。2.の場合は相手方に資金調達サポートもできる会社でなければなりません。それでも難しい場合は例えばご自身の共有持分の一部(例えば1/3の共有持分を持っていたとしたら、その半分の1/6など)を買い取ってくれて、相手方と交渉してくれる不動産会社がベストだと思います。交渉期間をあらかじめ決めておいて、没交渉であれば一定額で全部を買い取ってもらうことにも対応してくれる方が良いでしょう。