共有物分割請求とは

共有物分割請求は通常の民事訴訟と異なる類型で、どちらか一方の勝ち負けを決する訴訟とは異なります。単に申し立てだけすればよく(非訟事件)、裁判所は当事者の主張に拘束されることなく分割の判決を下すことができるという点が特徴的です。

以下民法に規定があります。

(裁判による共有物の分割) 

共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
一 共有物の現物を分割する方法
二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
3 前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
4 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。

民法第258条

このように共有物は共有者との協議が不調に終われば裁判所に分割請求することは可能です。

注意:相続財産の場合は共有物分割請求できない

ただし相続財産については別の規定があります。

共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。

 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から十年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。

 相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第一項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から二箇月以内に当該裁判所にしなければならない。

民法第258条の2

つまり相続財産は10年経過後(共有者である相手方相続人が異議を申し出がない場合に限り)でなければ共有物分割請求ができないということです。この点は注意が必要です。

共有物分割請求の流れ

共有物分割請求の流れは以下の通りです。

  • 共有物分割協議(話し合い)
  • 調停
  • 訴訟

では詳しく見ていきましょう。

STEP1. 共有物分割協議(話し合い)

まずは共有者と共有物の分割について協議を行います。協議方法については必ずしも面談である必要もなく、電話やメール等も認められています。ただしこじれているケースがほとんどのため基本的には不調で終わることを前提にしておかなければなりません。不調に終わったことを証明する手段として内容証明を相手方に送ることが一般的です。この書類はSTEP3の訴訟申立に必要となってきます。

STEP2. 調停

裁判所の調停委員立ち会いのもとで共有物について協議を行います。一般の訴訟であれば訴訟を起こす前に調停を行う(「調停前置主義」という)必要がありますが、共有物分割請求訴訟にはその必要がありません

共有物分割協議で不調に終われば、もはや調停委員が立ち合いをしたところで解決の見込みはありません。調停前置主義でない以上は調停を割愛して訴訟を提起するケースがほとんどです。

STEP3. 共有物分割請求訴訟

3-1. 裁判所に訴訟申立

訴訟提起の裁判所

共有不動産の所在地、または被告の住所地を管轄する地方裁判所への訴訟提起となります。

提出書類

必要書類は以下の通りです。

  • 訴状
  • 共有物分割協議議事録
  • 土地建物全部事項証明書
  • 土地建物固定資産税評価証明書
  • 印紙代(訴額に応じた印紙手数料)
  • 郵便代(共有者等当事者に裁判所から書面を郵送する費用)

3-2. 第1回口頭弁論期日が指定

訴状提出からおよそ1月~1月半後に口頭弁論期日が指定されます。

3-3. 口頭弁論または答弁書提出

口頭弁論で原告・被告が言い分を主張します。ただし被告のほとんどは出席するケースは少なく、期日の1週間前までに答弁書を提出し反論趣旨を主張することとなります。また口頭弁論は必要とあらば続いて日を改めて2回・3回と続いていくこととなります。

3-4. 審理

分割方法に争点があるのか、価格に争点があるのかその他を見極め判決

争点がどこにあるか見極めつつも和解の可能性も探ります。しかしその和解も難しいようであれば裁判所は最終的に判決を下すことになります。その解決方法は3つです。

  • 価格賠償
  • 現物分割
  • 換価分割(競売)

となります。

共有物分割請求の3つの判決パターン

1. 価格賠償

共有者の一人がその他の共有者の持分を買い取り、単独所有とする方法です。価格の決め方については不動産会社の査定書や不動産鑑定士の鑑定書をもって裁判官が間に入り協議して決定します。また買い取る側の共有者は買い取り資金の裏付けとして預貯金通帳もしくはローン承認の書類などを提出することとなります。

2. 現物分割

大きい土地であれば分割をすることも可能です。また分割した土地に金額の差異が生じればプラスアルファで金銭で調整したりすることもございます。一般的な戸建やマンションでは現実的ではありません。理屈上可能だとしても不動産としての価値も減じてしまいます。

3. 換価分割(競売)

価格賠償・現物分割ともに難しい場合は最終的に換価分割となります。競売になると市場の8割程度の価格での落札となりますが、社会の要請としても不動産を細切れにしていくことは決して望ましいことではありません。なお競売申立てについては費用が発生します。不動産の固定資産税評価額によって変わりますが、通常の住宅であれば60~100万円が一般的です。競売の流れ自体は抵当権実行や強制執行競売などと同様となります。

共有物分割請求のデメリット

デメリットは以下の4つです。

  • 弁護士費用等がかかる
  • 手間や時間がかかる
  • 自身が望む解決方法になるか分からない
  • 共有者との関係悪化

特に「3. 自身が望む解決方法になるか分からない」「4. 共有者との関係悪化」は最大のデメリットかもしれません。

「3. 自身が望む解決方法になるか分からない」については、原則裁判所の判決に委ねる形となります。どういう結論が出るかフタを開けて見なければ分かりません。「4. 共有者との関係悪化」について解決方法はどうであれ「裁判で争った・裁判で訴えられた」という事実は残ります。共有者としてそれなりの関係があった人との関係悪化はやはり気持ちの良いものであありません。