親族間売買とは
売主が、親族である個人に不動産を譲渡することです。親族に購入してもらうため、リースバックと比べ条件面・感情面において納得感のいくケースが多いことも確かです。当社でもリースバックご検討のお客様にはまずは親族間売買の可能性についての検証も行わせていただきます。しかし当然ながらこの親族間売買は越えなければならないハードルがあることも事実です。
親族の範囲
民法上の親族の定義と税務署の判断は異なる
なぜ親族間売買は税務署に警戒されるのでしょうか。ずばり相続税回避のための低額譲渡です。そもそも贈与税法という税法はなく、贈与税は相続税法に規定されています。よって民法上の親族ではなく、あくまで推定相続人に対する財産移転に注意が払われることとなります。よって一般的には相続人となりうる「配偶者・子や孫・両親・兄弟姉妹」に対する親族間売買には慎重な対応が必要となります。
親族間売買にかかる費用
通常の売買と同様で一般的にかかる費用を列挙しました。※なお当社では仲介手数料の割引がございます。
売主
項目 | 費用 |
---|---|
1. 登録免許税(抵当権抹消) | 1筆1,000円 |
2. 司法書士報酬 | 3~5万円 |
3. 仲介手数料 | 売買代金×3%+60,000円(税別) |
買主
項目 | 費用 |
---|---|
1. 登録免許税(所有権移転) | (土地)評価額×1.5% (建物)評価額×2.0% |
2. 司法書士報酬 | 3~5万円 |
3. 不動産取得税 ※ | (土地)評価額×1.5% (建物)評価額×3.0% |
4. 融資事務手数料 | 融資金額×1~3%(相場) |
5. 登録免許税(抵当権設定) | 債務額×0.4% |
6. 司法書士報酬(金融機関指定の場合) | 3~5万円 |
7. 仲介手数料 | 売買代金×3%+60,000円(税別) |
8. 印紙代(不動産売買契約書・金銭消費貸借契約書) | 各1~6万円程度 |
※後日払いです。半年ほど経過すると都県税事務所から納税通知書や納付書が送付されます。
親族間売買で注意すべき6つのポイント
1. 適正価格
価格設定次第では低額譲渡とみなされ贈与税が課される
適正価格でなければ、時価との差額は売主から買主への贈与とみなされ、贈与税が課税されるリスクがあります。贈与税は非常に税率の高い税目のひとつで最高税率は55%。親族間売買で低額譲渡とみなされれば時価と売買代金の差額に贈与税が課税されてしまいます。多くの方が気にしているリスクはみなし贈与に該当するか否かでしょう。
2. 譲渡所得税
不動産を相続で取得した人は特に注意が必要
第三者への売却であれば利益が出たとしても3000万円までは無税ですが、親族間だとこの「 3000万円の特別控除 」は利用できません。その結果として譲渡所得税が課税される可能性が高まります。所有期間が5年以内の場合は約40%、5年超の場合は約20%の譲渡所得税が課税されます。特に、相続で土地建物を取得された場合は取得原価は売買代金の5%で計算されるため譲渡益が発生することは確実です。翌年2月の申告と同時に譲渡所得税の納税が必要となります。
3. 住宅ローン
審査業務に対する専門家の無理解が住宅ローンの審査を難しくする
親族間売買の住宅ローンは確かに金融機関から警戒されます。しかし警戒される理由の発端は不動産営業マンの審査業務に対する無理解が起因するケースも多々ございます。例えば「住宅ローンはどの金利よりも安いから、金融機関は他の資金使途で利用されてしまうというリスクを避ける傾向にある」というそれっぽい事を言っている専門家が居たら、審査業務を全く理解していないと思ってください。
4. 住宅ローン控除
一定の条件を満たせば親族間売買でも住宅ローン控除は可
実は親族間売買でも一定の条件を満たせば住宅ローン控除の利用が可能です。ただし住宅ローン控除は税務署管轄です。よって親族間売買の取引自体が税務署の目にとどまることとなります。売買代金が適正価格かどうかも含めてしっかりと検証する必要がございます。
5. 詐害行為
意外と多い詐害行為に近い親族間売買のご相談
会社を経営していて破産を検討している方、ワンルームマンション投資で失敗してしまった方、もしくは自宅を競売にかけられたにも関わらず実家を相続してしまった方などが親族間売買を検討することがございます。債務から逃れるために親族に不当に安い金額で譲渡したと見なされれば、親族間売買の取引自体を取り消される可能性がございます。適正価格も含めて慎重な取引が必要となります。
6. その他推定相続人とのトラブル
疎かにしがちな将来の相続時のこと
親族間売買は適正価格で取引されようがされまいが、相続時にトラブルになることは多々ございます。適正価格であるかどうか、その時にどのような金銭の授受があったかは分からないからです。無用のトラブルを避けるためにも推定相続人のことを念頭に置いておくことが肝要です。