任意売却の解説<vol.4_期限の利益の喪失>

2021.01.19 / ニュース&ブログ一覧

みなさん、こんにちは。PLY不動産研究所の鈴木です。

本日はブログ「vol.3_担保権の実行」の中にも登場した「期限の利益の喪失」について詳しくお話していきたいと思います。金銭消費貸借契約で取り決めをした「期限の利益の喪失事項」に該当したら、一括請求がされるというお話をしました。では「期限の利益」とその「喪失事項」とはどのようなものがあるのでしょうか。

<期限の利益>

期限の利益については民法に記載されています。

民法136条「期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。(以下省略)」

e-gov法令検索「民法」より

期限の利益とは、「債務者は期限まで債務の履行をしなくてよい」という利益のことです。金融機関などから借りたお金は返済日(期限)まで返済する必要がありません。たとえ金融機関やその他の債権者が、お金が必要だからといって急に返済を迫られたら債務者は困ってしまいます。民法ではそのようなことがないように期限の利益は債務者にあると推定した規定を設けているのです。

でもその期限の利益もどんな時でも保護されているかというとそうではありません。そのために民法では期限の利益の喪失についても規定されています。

<期限の利益の喪失>

民法の規定は以下の通りです。

民法137条「次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
1 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
2 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
3 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。」

e-gov法令検索「民法」より

このような状況になったら、期限の到来を待たずして債務者に請求をすることができるのです。

<期限の利益の喪失>

民法の規定では上記の3つに該当した場合に期限の利益が喪失しますが、もちろん債権者債務者双方の合意に基づいて追加することができます。金融機関が指定する金銭消費貸借契約にはこれ以外のものが多数列挙されています。では実際に金銭消費貸借契約にどのように記載されているかほんの少し見ていきましょう。

(期限の利益の喪失)「1、借主について次の各号の事由が一つでも生じた場合には、貸主からの催告通知等がなくても、借主は貸主に対する一切の債務について当然期限の利益を失い、ただちに債務を返済するものとします。」

として以下事由が列挙されます。あまりにも多いので要約してお伝えします。大きく分けると以下の4つに集約されます。

1)支払能力の疑義が生じた事由の発生

裁判所への申立て(破産・民事再生・会社更生・特別清算など)や税金等の滞納による差押や仮差押、商売をしているのであれば手形の不渡りなどです。

2)履行(返済)遅滞

債務の一部でも履行期が過ぎたら履行遅滞となります。要するに一日でも返済期日を過ぎたら金融機関は「期限の利益の喪失」を主張することができます。

3)担保不足の疑義が生じた事由の発生

火災による建物の滅失などがこれに該当します。不動産を担保にしているので建物が滅失していたら担保価値が減少してしまいます。(金融機関は火災保険に質権設定しているため現実的には保全は取れていますが、ここでは割愛します。)

4)虚偽の書類提出、報告等

最近ではスルガ銀行の不動産投資用ローンの借入をするために収入証明を改ざんしたり、もしくはフラット35で住宅ローンとして借りたが実際は投資用マンションのローンだったという資金使途の虚偽報告という問題がありました。このような事由を想定して記載されています。

このように金融機関によってまちまちですが、「期限の利益の喪失事項」については数多く定められています。金融機関からすれば債務者から無理筋の「期限の利益」の主張がなされないよう、取り決めをしているのです。

いかがでしたでしょうか。契約時にはあまり気にして読むことはないと思いますが、期限の利益の喪失事項にはこのようなことが列挙されているのです。

本日は以上です。

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